天才ですよね、相も変わらず

松本清張、この作家の作品を見た事がない人はいないと思います。文字が嫌いだから原作は見た事ないけど、沢山テレビやら栄華やらで映像化されているからそっちで内容保管をしているからいいんだもんと言った人もいるでしょう。ただメディア商材として映像化している作品は原作者が内容に関して口を出せる場合と出さない場合、もしくは出せない場合等など裏には裏の事情というものがありますが、また別の話かもしれません。そもそも松本先生は既に故人となっているので逆に映像に関して助言するために映像監督あたりに憑依してダメ出しする、そんな事があるわけありませんね。あったらあったできっとインチキ霊媒師的なことが行われているみたいなことになっていると、あながち起こっていないとは言い切れないのが怖いところです。ある意味では松本先生の作品群はそういった特色の強いものばかりとなっているので、信者として崇めているコアなファンの人達はある意味で物凄いインパクトがあるかもしれません。

松本先生の作品の中で人気のあるものとして挙げるなら、一体どの作品が人気を博しているのか時になるところですね。どの作品も社会の闇を掘り下げるだけ掘り下げて表現しているものばかりとなっています、特に女性の社会的なものを利用してのし上がっていく様は寒気が走るほどの圧倒的なものだと思いませんか?ということで通販サイトとしてもはや世界規模でそのシェアを確実にものとしている企業の、松本先生の作品をピックアップしたランキングがありましたので紹介していきます。なお、ランキングの作品には連名でその他の作家が参加しているものもありましたのでそちら省くのと、上下巻となっているものについても一つの作品としてカウントしていきますので、予めご了承ください。

  • 1位:黒の回廊:松本清張プレミアム・ミステリー
  • 2位:或る「小倉日記」伝
  • 3位:点と線
  • 4位:黒地の絵
  • 5位:軍師の境遇 新装版
  • 6位:砂の器
  • 7位:疑惑
  • 8位:山峡の章
  • 9位:岡倉天心・・・そのうちなる敵
  • 10位:黒い空
  • 11位:ゼロの焦点
  • 12位:日本の黒い霧
  • 13位:ミステリーの系譜
  • 14位:神々の乱心
  • 15位:地の指

出来るのであればもっと紹介して行きたいのですが、何分発表している作品が非常に多いためにそういうことをしているとんでもなく時間を要してしまうので、一先ず15位まで紹介しておきましょう。見るとどれもこれも聞いたことのある作品ばかりとなっていますが、この中で皆さんはどの作品をお好みでしょうか。とはいえ、どの作品にも人間一人の個人的な深層意識に隠れ潜んでいる闇をまざまざと表現しているということだけは確かです。作品を見るとほとんどの物が過去に何度と無く映像化もされている作品も見受けられていますが、個人的な感想を言わせて貰えばここまでに『黒革の手帖』がないというのが少し残念だった気分です。私が本格的に松本清張という存在を知ったのもかなり遅い時期で、しかもドラマ化した内容でその作品の存在と作家である清張先生をようやく知ることとなりました。いくらか脚色や最後の展開はいくらか改変されているため、純粋に原作を読んだことがあるというわけではないのでファンの人には失礼かもしれません。

ですがこの作品を初めてみた時には正直震えるほど、そのリアルすぎる世界に対して寒気を感じたというのが正直な感想です。おまけに実際にありそう内容だということもそういった心理を裏づけしているのかもしれません、それくらい私にとって松本清張という一人の作家の存在は今まで見たことがないようなそんな印象を持つようになりました。それ以来松本先生の作品を幾度と無く見る事になりましたが、一重にどれもこれも『女と男と女のドロドロした愛憎劇』というものです。定番といえば定番で、それこそ表現しきれないような恋愛模様が現代でも繰り広げられていますが、そんな描写を飛んだ作品を松本先生もまた、数多く輩出しています。しかしそのどれもこれも決していやらしい意味でなく、そして当時の社会的なものを参考にして完璧なまでに作られたその世界観は見るものを虜にしていきました。それこそ先生が発表した作品のありとあらゆるものがテレビに映画、そして舞台という方向にまで原作作品として用いられることになると、一躍日本を代表する昭和時代の作家としての地位を築き上げていくことになります。

そこで今回はそんな松本先生の作品の一つで、昭和時代における女性の社会的身分・そしてそこから這い上がろうとする女性達の生き様をまざまざと表している作品でもある『ゼロの焦点』についてお話をしていきましょう。こちらの作品もまたテレビドラマはもちろん、劇場用作品としてこれまでに二回製作されています。特に21世紀に公開されたゼロの焦点については、2009年に公開されたのですがこの年はちょうど今は亡き松本清張先生の生誕100周年を記念して作られたものとなっていますが、見た事がある人もいるかと思います。

そんなゼロの焦点の簡単な物語のあらすじを紹介していきましょう。

物語のあらすじ

ゼロの焦点が舞台となっているのは世界大戦が収束してからまだ日が経っていない時代、その頃はいまだに現代社会のように女性の社会的な立場が非常に低い時代でもありました、そんな激動の時代を生きていた女性達の欲望と執念を表現しています。では簡単に物語のあらすじから振り返ってみましょう。

戦後の混乱期の中、日本は新たな時代を迎えようと必死に国と国民共にもがいていた。そんな中で決して裕福ではないにしても一つの幸せを掴み取っていた新婚の禎子は夫の憲一が出張で金沢の方へ出かけているので、今か今かと夫が帰ってくるのを待ち続けていました。しかし約束の一週間といっていた出張だったはずが、帰宅時間を過ぎても一向に帰ってこない恵一のことを心配した禎子は夫へと電話をかけても繋がらないので、単身金沢へと探すために動き出すのだった。憲一は金沢から東京へと転勤することになったのでそのための引継ぎをするために向かったことを聞かされていた禎子だったのですぐに終わると聞いて送り出したのに、そう感じながら彼女は金沢の地に降り立つ。しかしそこで禎子は憲一が既に一年半前から会社の寮から出ていること、何処に住んでいる事といったような個人的な情報を引き出すことが出来ないでいた。住んでいる場所を隠してまで何をしたかったのか、禎子は夫の影を追いながら何処に向かったのかを独自に調べるが中々情報を入手することが出来なかったので、憲一の勤めていた会社へと訪れる。そこで憲一の営業先でもあった室田耐火煉瓦会社の社長であり、憲一のことを大変気に入っていた社長の室田儀作とその妻である佐知子に会いに行くも、まともな情報さえ入手出来ないでいた。そんな時に憲一の兄である宗太郎が禎子の滞在先にある旅館に訪れて、自分が弟の行方を探し出して見せるから安心して欲しいと告げる。しかしそんな時に宗太郎が泊まっていた旅館にいるときに毒殺されてしまうという事件が起きてしまう。その時旅館の従業員が目撃した犯行現場から逃走している犯人らしき女性で、深紅のコートを着込んで公は営業として認可されていない娼婦、通称パンパンのような格好をしていたというのだ。その情報を入手した禎子はもう一度室田耐火煉瓦会社を尋ねて、そこで働いていた受付情の久子という女性と遭遇する。彼女が何らかの形で事件に関わっているとにらんだ禎子は彼女の身辺調査を本多に依頼する。その中で分かった事は久子が貧しい家庭出身で、煉瓦社で働くことになったのも社長の口利きを持って入社していたことを明らかになる。そういったことから儀作と久子は愛人関係にあるのではと噂が立っていたので、なおのこと彼女のことを怪しく感じた禎子は久子と会う約束を取り付けるも、そこで更なる事件が起きてしまう。なんと久子の家から謎の他殺体が発見されるという展開になってしまうのだった。まるで事件が事件を呼ぶことになる中で、憲一を殺した犯人と、連続的に人殺しに参加している犯人の正体は一体誰なのか、分からないことが多く浮かび上がってくる。そしてそんな中で禎子は自分が知らない憲一の素顔を見つけていくことになるのだった。

典型的な推理小説らしい展開という風に考えれば、王道中の王道パターンと考えられるかもしれません。そしてそんな展開を描いた内容としては、歴年のファンも再度リメイクしたゼロの焦点を評価している人もいると思います。私としてはこの作品は原作は未読のため、映画が初見となっているために原作との違いについてはなんとも言えないのですが、調べてみると内容は原作に準拠したものとなっているのが特徴だと述べている人もいます。原作を忠実に再現しているのはファンにとって非常に嬉しいことだと思います、映画やテレビ作品は個人受けを見越していくらかの改変を施す必要があります。例えば代表的な性表現などを過度に扱っている場合には、どんな年代にも見られるような作品にしたいと考えているならそういった倫理的な問題を加味して脚本は作られていきます。その内容に大体の原作ファンが一気にアンチモードへと移行してしまうわけですが。

そんなゼロの焦点に見所としては、愛している人のすべてを知っているかどうか、というところでしょう。幸せな結婚をしたと思っていた禎子であったが、夫の失踪という事態になった際に改めて考えてみると、自分は彼のことを何も知らないことに気付くのです。そして夫の情報を探そうと一人金沢の地を奔走していく中で、自分の知らない夫の過去と直面していくことになります。そんな夫の素顔に近づいていけばいくほど、そこから湧き上がってくる事実と向き合っていくことで禎子は夫を殺した犯人をついに特定するまでに行き着くのです。よくよく考えたら非常に都合のいい展開と思えなくもないですが、そこのところはお約束として受け入れておきましょう。作品としては文句のないものとなっているので、見たことがない人は一度じっくり見てみるのもいいのではないでしょうか。